令和6年(2024年)5月7日に、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、民法等の一部を改正する法律が成立しました。
この改正法は、こどもを養育する父母の責務を明確化するとともに、親権(単独親権・共同親権)、養育費、親子交流などに関するルールが見直さ
れ、令和8年(2026年)4月1日に施行されます。
1.「親の責務等」のルールが明確になりました
父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する責務を負うことなどが明確化されています。
●こどもの人格の尊重:親は、こどもの心身の健全な発達を図るためこどもを養育する責務を負います。
●こどもの扶養:こどもが親と同程度の水準の生活を維持することができるよう扶養する義務を負います。
●父母間の人格尊重・協力義務:婚姻関係の有無に関わらず、こどもの利益のために親同士がお互いを尊重し協力しあわなければ
なりません。
なお、下記のような行為は、この義務に違反する場合があります。
*ただし、身体的・精神的DVや虐待等から逃げるなど、正当な理由がある場合は、このルールに違反しません。
・父母の一方から他方への暴行、暴言、脅迫など心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷など
・別居している親が、同居してこどもの世話をしている親の日常的な養育に不当に干渉すること
・特段の理由がないのに、一方の親がもう一方の親に無断でこどもを転居(引っ越し)させること
・裁判所などで決まったこどもと別居親との交流(親子交流)を、特別な理由もなく拒否すること
・父母の協力義務に違反した場合、家庭裁判所で親権者の指定、変更、親権喪失等の審判がなされる際に
違反の内容が考慮され、違反した者に不利となる可能性がある
【参考】法務省Q&A(民法編)
(外部リンク)
●こどもの利益のための親権行使:親権(こどもの面倒をみたり、こどもの財産を管理したりすること)は、
こどもの利益のために行使しなければなりません。
2.親権・監護等に関するルールが見直しされました
これまでの民法では、離婚後は、父母の一方のみを親権者と定める必要がありました。
今回の改正により、離婚後は共同親権(父母の両方が親権を持つ)の定めをすることも、単独親権(父母のどちらか一方だけが親権を持つ)の
定めをすることもできるようになります。
●親権の決め方について
話し合いで決める:父母の協議(話し合い)で、共同親権にするか、単独親権にするかを決めます。
裁判所が決める:話し合いで決まらない場合や、親権を共同にすることでこどもに悪影響があると裁判所が判断した場合(例:DVや
虐待がある場合など)は、裁判所がこどもの利益の観点から、どちらにするかを決めます。
●親権の行使について
父母が共同親権を持つことになった場合の親権の行使方法のルールが明確化されています。
法務省は、単独で行使できる行為や事項として次のように示しています。
| 日常の行為に当たる例(単独行使可) | 日常の行為に当たらない例(共同行使) |
・食事や服装の決定 ・短期間の観光目的での旅行 ・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定 ・通常のワクチンの接種 ・習い事 ・高校生の放課後のアルバイトの許可 | ・こどもの転居 ・進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職 するなどの判断を含む) ・心身に重大な影響を与える医療行為の決定 ・財産の管理(預金口座の開設など) |
3.養育費の支払い確保に向けた見直しがされました
養育費とは、離婚などで親が別々に暮らすことになっても、こどもが生活したり勉強したりするために必要な費用です。
離婚のときに養育費の取決めを行えなかった場合でも、新たに「法定養育費」を請求できるようになり、容易に差押えの手続きを
申し立てることができます。
●「法定養育費制度」の導入(金額を決める前の緊急対策)
離婚のときに養育費の取決めがなかった場合でも、こどもを主に育てている親は、相手に対し、離婚の日から一定期間、すぐに養育費を
請求できます。この請求できる金額は、今後、法務省令で定められます。
●相手のお金に関する情報を集めやすくなる(情報開示命令)
養育費や婚姻費用の分担、財産分与の話し合いや裁判の際に、裁判所は親に対して収入や財産の状況に関する情報を開示するように命令
できるようになりました。
●差し押さえの手続きがスムーズに(ワンストップ化)
養育費を請求するための民事執行の手続きにおいて、地方裁判所に対する1回の申し立てで、財産開示手続、情報提供命令、債券差押命令
という一連の手続きを申請できるようになります。情報開示手続きと差押手続きがより連携して進められ、養育費を早く、確実に受け取れる
ようになります。
4.安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
新しい民法では、親子交流が「こどもの幸せ」のために安心・安全に行われるよう、ルールの見直しがされました。
●祖父母などとの交流もルールに(親族との交流)
祖父母とこどもが親子関係と同等に親密な関係であったときなど、こどもの利益のため特に必要だと家庭裁判所が認めたときは、
父母以外の親族とこどもとの交流を実施するよう定めることができるようになりました。
婚姻中別居の場合も含め、こどもと離れて暮らす親だけでなく、祖父母などの親族とも、話し合いで交流のルールを決められるように
なりました。
●DV・虐待に配慮した「試しに会う」制度(試行的実施)
親子交流を始める際、特に過去にDVや虐待があった場合などは、安全性を確認しながら交流を始めるための仕組みが整えられました。
試行的実施とは、裁判所での手続き中に、こどもの心身に問題がないことを確認した上で、試行的に交流を実施していることを促す
仕組みです。
●婚姻中別居の場合の交流も明確に(親子交流)
これまで、結婚したまま別居している場合(婚姻中別居)の親子交流については、法律のルールが不明確でした。民法改正により、
結婚していても別居している場合、こどもと離れて暮らす親は、こどもの利益を最優先に考慮して、父母の話し合いか、話し合いで決まらない
場合は家庭裁判所の審判により親子交流についての取決めをすることが明確になりました。
【参考ページ】